【再録】腐男子先生!!!!!文庫コミックスW2巻連動特典/オーディオ脚本

腐男子先生!!!!!」コミカライズ4巻発売を記念して、

W2巻連動特典でのオーディオドラマ脚本の公開を許可いただきました。

オーディオドラマの公開は終了しておりますが、

読者の皆様にログとして楽しんでいただけますように。

関係スタッフの皆様、出演声優の皆様には、改めて、御礼申し上げます。

なお、この脚本は、私の手元にある最終稿から、WEB再録にあたり改稿・編集が加えられています。ご了承下さい。

なお、当時のアフレコレポートはこちら

それでは皆様、お楽しみくださいませ。4巻もよろしくね!!!

  

腐男子先生!!!!! 4 (MFC ジーンピクシブシリーズ)

腐男子先生!!!!! 4 (MFC ジーンピクシブシリーズ)

 

 

 朱葉ナレ

ごく普通のイベント会場で、ごく普通の同人誌を挟んで、
ごく普通の腐女子、早乙女朱葉と、ごく普通の腐男子、桐生和人が出会った。
ただひとつ、ごく普通と違ったのは、二人は同じ高校の、教え子と教師だったのです。


(タイトルコール)
腐男子先生!!!!!』オーディオドラマ
「先生、恋の仕方を教えて下さい!」


(生物準備室のノックの音)
朱葉「先生、早乙女でーす」
桐生「開いてますよ」
(ドアを開ける音、朱葉歩みを進めて)
朱葉「失礼しま~す。って、うわ。いつにも増して散らかってますね、机の上。……これなんのアンケートですか? 授業じゃないですよね」
桐生「先日の学校説明会の中学生アンケート。当番で受け持ったんだが、打ち込むだけでも量が多くてな……」
朱葉「学校説明会か~。懐かしいですね。なになに……? 『先生が格好良かったから、受験しようと思いました! 受かったら、恋の仕方を教えて下さい!』だって。ひゅー!
桐生「ひゅー、じゃありません。まとめて中学校に返答をする身にもなって欲しい。進路を決める大事な説明会なんだから、もっと聞くべきことがあるだろう」
朱葉「格好いい先生がいるから、ってのも立派な志望理由なんじゃないですか? せっかく先生顔だけはいいんだから。ワタシモ先生ニ恋ノシカタヲオシエテホシイ~(棒読み
桐生「……言ったな? 本当に言ったな? 早乙女くんの頼みとあれば仕方がない! この俺がみっちり教えてやろう! 恋の仕方というやつを!
朱葉「……へ?」

 

(ホワイトボードを用意してペンを走らせる音。ホワイトボードを叩いて)
桐生「まず大前提として! 恋をはじめるためには登場人物が必要だ
朱葉「登場人物……」
桐生「属性はいかようでもいいだろう。幼なじみからはじまり敵同士、前世からの因縁、ライバルはいわずもがな、年の差、身分差など障害、格差はあればあるほど燃え上がる。なお先生は主人公受けが特に好きです
朱葉「わたしは黒髪受けが好きですね。属性でいうと太陽と月って感じのふたり」
桐生最高だ! そう、そんな登場人物は存在するだけで尊いものだが、物語とは二人が出会うことではじまるのだ。恋はひとりにしてならず。二人以上の心の触れあい、高ぶり、そこから恋が生まれるのだから! 魂の片割れとして生まれ落ちてもいいし、決して交わるはずのない二人が交わってしまうのもよし! ちなみに早乙女くんが好きな出会いシチュを聞こう!」
朱葉「えっいきなりですね。好きな、出会い……? 普通に転校生シチュとか好きですけど、それよりこう、敵に襲われたりした時に『下がってろ!』とかって侠気見せられるのにぐっときますね」
桐生素晴らしい! それこそまさに出会いの一言だと言っていいだろう。その瞬間は恋を自覚していなくても、後に何度でも思い出すことになるのだからな」
朱葉「確かに何度でも思い出しますね……。ちなみに先生、一番最初にわたしにオタバレした時、言ったことって覚えてますか?」
桐生「忘れられるはずがないだろう!『逃げるは一時の恥、逃すは一生の後悔』
朱葉何度聞いても最低ですね……
桐生「ちなみに俺は出会いシチュとして、出会った瞬間刃を交わらせるやつが好きです。殺し合い、略して──恋
朱葉「普通に考えて略しすぎでは」
桐生「まあどんな出会いであっても俺達は脳内によってあらゆるパロができるわけだが。運命の二人は結局どんな出会いであっても恋に落ちると相場が決まっているわけだ
朱葉「でた。先生の好きな運命……」
桐生「そう!! 運命! 恋を導くのは運命、運命によって裏付けされるのが恋、スケールは大きければ大きいほどいい、宇宙というものは愛しあう二人のために用意されたといっても過言ではない。現代において人間の想像力はもはや運命を目視できる域にまで達した! 運命は見える! 見えるということは知覚出来るということ、知覚出来るということは創造出来るということ、つまり! 運命は……つくれる!! ここ、テストに出ます
朱葉「どこのテストに?」
桐生「俺の心のテストだ! 運命はつくれる。これ以上力強い言葉があるだろうか。特に薄い本において! 俺達はあえて火のないところに煙を立てる! 二人のためなら村も燃やす! 因縁とは恋であり執着とは恋であり偶然もまた恋である! 同じコマに入ることによって教会が建つ! たまに同じコマに入っていなくても建つ!
朱葉安い、早い、みたいな話ですね」
桐生しかも美味い! 俺達はなんといい時代に生まれたんだろう! こと妄想の世界において、俺達はあらゆるしがらみから解き放たれ自由を手に入れた! しかも早乙女くんは同人作家ぱぴりお先生としてその妄想を出力する類い希なる能力を持ってうまれ、俺はその本を購入するという僥倖にあずかることが出来た! 同時代同時期同ジャンル同カップリングにおいて俺達が出会えたこと、これもまた運命と言ってもいいのではないだろうか!?」
朱葉「え、そういう方向に話を持っていきます? 今そういう話でした? 大丈夫ですか? 先生生まれつきちょっといい声帯をもらったからって調子にのってませんか?」
桐生「調子にも乗るだろう、今日は声の調子も最高にいい……今なら刀を持って立ち回ったり劇団の主演をはれたりバレーをしたり出来そうな気さえする」
朱葉先生が今一番するべきことはアンケートの打ち込みですけどね
桐生(机を叩く音)現実が地雷です!!」
朱葉「それは観念してください。『地雷を踏んでまだ息があるのか? 苦しいだろうから今すぐとどめを刺そう』って言ってたの先生ですよ」
桐生「その通りだ。ここは戦場だぞなぜ地雷がお前を避けてくれると思ったのか……。しかし現実という地雷など些末な問題だ。たとえ身体が四散しようとも、俺にはその先、次のオンリーイベントにおけるぱぴりお先生の新刊が待っているのだから!」
朱葉「待ってねぇよ。わたしがこれからつくるんだよ」
桐生「というわけで次のイベントの新刊、主人公が深い傷を負ったことにより彼に思いを寄せるイケメンが目をそらし続けていた己の恋心に気づいてしまうも主人公の負担になることをおそれ、ぎこちないながらもこれまでの関係を続けようとするが、すでに一度知ってしまった喪失の恐怖から逃れることが出来ず、思わずその華奢な身体を抱きしめてしまう! 最高のあれ! どうぞよろしくお願いいたします! 三冊買う
朱葉「待って???? まだネームを描き終わってもいない新刊のあらすじ勝手につくらないでくれます? しかもすごくありそうなのがいや。そもそもこの流れって恋をつくってるのわたしじゃないですか!? 先生が恋の仕方を教えるやつどうなった?」
桐生「いやあ、この間SNSにあがった3ページネーム最高でした……まさに……神かよ……」
朱葉「だから待って? 今ファイル開いたよね? なんで開いた? もしかして先生わたしの落書きネーム印刷してない? あまつさえファイルにとじたりしてない?」
桐生電子データなど虚像だ、何度だって言おう、紙こそ至高! 形あるものしか俺は信じない!
朱葉「燃やしていいかな? かな?」
桐生「違うこれは、これはバックアップなんだ! 早乙女くんが不測の事態によりネームを紛失するリスクヘッジとして」
朱葉「誰も頼んでませんから!! いいからとっとと先生はこの形あるアンケートを電子化してください!」
桐生「うう……やるしかないのか……」
朱葉「やるしかありませんよ。わたしはネームの続きをやりますから。お互い頑張りましょう?」
桐生「俺の仕事が進むにつれてぱぴりお先生の新刊ネームも進むということか……。悪くない……悪くないぞ……。あっ、あと無料配布ペーパーの内容で悩んでいるんだったら俺は脈絡もなくはじまる王様ゲームのシチュエーションが好きです!
朱葉悩んでないしリクエストも受け付けてません! そもそもまだ無料配布まで手が回ってませんから!
(ため息をついて)なんかもう、先生を見てると、この先生と恋の仕方があるなら私の方が教えて欲しいって気持ちです」
桐生「ここまで熱く特別授業をしたのにわかってもらえないとは残念だ。ぜひ今度改めて補修をさせてもらおう」
朱葉「はいはい。次はなんですか?」
桐生「そうだな……。じゃあ、イベント会場からはじまる神絵師との恋について?」
朱葉「……運命をつくるにしても、ちょっと強引すぎるんじゃないですか?」


先生は、恋の仕方ならいくらでも教えてくれるけれど。
わたし達に恋がはじまるのかどうかは、どんな運命の神様でも、知らないことだ。